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アレルギー性気管支喘息の薬は「ステロイド」や「気管支拡張薬」だけではない!
アレルギー性気管支喘息の薬の基本は「ステロイド吸引薬」と「気管支拡張薬」。
そして、そのステロイド吸引薬や気管支拡張薬も多種多様な種類が出ており、色々な製薬会社から、様々なタイプの物がでているということがわかりました。
ほとんどのアレルギー性気管支喘息は吸入ステロイドと気管支拡張薬の合剤で、症状を抑えコントロールしていくことが可能となりますが、それでも抑えきれなかったり、薬の吸引が上手くできないこともあります。
そんな時に、ロイコトリエン拮抗薬や漢方薬、いざという時の経口ステロイド薬などが役立つのです。
今回は、アレルギー自体を抑える薬や、経口ステロイド薬、漢方薬など、「メインの薬を支える名脇役」な薬をピックアップしていきたいと思います。
非常に使いやすい「ロイコトリエン拮抗薬」
気管支喘息の予備軍である、咳喘息になってしまった場合にも、しっかりと早急に症状を抑えたいと処方されることの多い「ロイコトリエン拮抗薬」。
ロイコトリエン拮抗薬とは、気管支の炎症に関わる、炎症物質の一つである「ロイコトリエン」をブロックするお薬で、アレルギーを起こす「ヒスタミン」をブロックする「抗ヒスタミン薬」と同じような効果を発揮します。
(抗ヒスタミン薬は「ヒスタミン」に作用し、ロイコトリエン拮抗薬は「ロイコトリエン」に作用するということです)
副作用は「消化器症状(吐き気・腹痛・下痢など)」「血小板減少(頻度は極めて稀)」「肝機能障害(どの薬にも起こりえる副作用)」といった程度で、副作用も少なく、喘息治療でとても使いやすい薬とされています。
【ロイコトリエン拮抗薬の種類】
オノン(一般名:プランルカスト)
カプセル・ドライシロップタイプがあり、ドライシロップタイプは子どもでも服用可能。
1日2回、1回2カプセルを服用。
シングレア/キプレス(一般名:モンテルカスト)
錠剤・OD錠・細粒剤・チュアブル錠と種類も多く、子どもにも服用可能。年齢に合わせて薬のタイプを変えて処方できます。
1日1回、1錠。
【ロイコトリエン拮抗薬の豆知識】
オノンとシングレア/キプレスの違いは服用する回数とタイミング。
オノンが1日2回なのに対し、シングレア/キプレスは1日1回、寝る前の服用で大丈夫。
どちらも効果のほどは同じなので、飲み忘れてしまいそうな場合はシングレア/キプレスにしたり、量を調節したい場合はオノンにするなど、必要な方を選ぶとよいでしょう。
因みに、ロイコトリエン拮抗薬はアレルギー性気管支喘息だけではなく、鼻水・鼻づまりといったアレルギー性鼻炎にも効果的です。
ロイコトリエン自体も体のアレルギー反応を起こす物質なので、それを抑えることによって、鼻のアレルギー反応も抑えられるのです。
とはいえ、アレルギーに関する化学伝達物質の中で最も大きな働きをするのが、ヒスタミンなため、それを抑える抗ヒスタミン薬の方が速効性があります。
ですので、ロイコトリエン拮抗薬でアレルギー症状が抑えられるという点については、副産物のような形で考えていた方がよいかもしれませんね。
昔から使われてきた「テオフィリン製剤」
テオフィリン製剤とは、「気管支を広げる作用」「炎症を抑える作用」を持った、合剤のステロイド吸引薬のような作用を示すお薬。
1980年代には、喘息の第一選択薬として多用されてきましたが、ステロイドやβ2刺激薬が出てからは、抗炎症作用においても、気管支拡張作用においても、どちらにおいてもステロイド吸引薬に劣るということで、あまり使われなくなってしまいました。
ですが、今でも他の薬が効かないときの選択肢として選ばれています。
【現在使われているテオフィリン製剤】
- テオドール
- テオロング
- ユニフィルLA
【テオフィリン製剤の注意点】
テオフィリン製剤は、コーヒー等にも含まれている「キサンチン誘導体」という成分がメインとなっています。
キサンチン類はアルカロイドの一群を占めて、穏やかであるものの、「興奮剤」「気管支拡張剤」としての効果が得られる物です。
ですが、一方で「アデノシン」が睡眠を邪魔してしまうこともあります。
まさに、コーヒー(カフェイン)を飲んだ時と似たような症状でもって治療していくイメージですので、テオフィリン製剤を使用している間は、定期的な血液検査を行い、テオフィリン中毒を起こさないか監視していく必要があるのです。
もちろん、長期服用にはあまり向いていないとされていますので、長期服用が必要になるときは他のお薬も視野に入れて考えていくことになるでしょう。
まだ未知のお薬「抗コリン薬」
抗コリン薬は慢性気管支炎やCOPD、パーキンソン病、胃腸障害などの治療薬として、長年使われてきた薬ですが、近年、重度の喘息への効果もあると研究され、2014年になり重度の喘息の患者への治療薬として、認められるようになりました。
【現在認められている抗コリン薬】
- スピリーバーレスピマット
長時間型の吸入抗コリン薬。
気管支の収縮を促すアセチルコリンを邪魔することによって、気管支を広げる効果があります。
【抗コリン薬の問題点】
抗コリン薬は古くから使われている薬なのですが、その作用の強さや副作用からまだまだ扱いの難しいお薬とされています。
スピリーバーレスピマットも「閉塞隅角緑内障」や「前立腺肥大症に夜排尿障害」がある方は使用することができませんし、今のところ重症の喘息患者にしか適応できないお薬となっています。
もっと研究が進み、安全性が確認できるようになれば軽症の喘息でも使用できるようになるかもしれません。
いざという時の「経口ステロイド薬」
吸引ステロイド薬やオノンやシングレア/キプレス等を使用しても効果が現れず、重い喘息症状が改善されない場合、経口ステロイドの服用が検討されることがあります。
吸引ステロイド薬と違い、口からのむステロイド薬の場合、胃や腸から吸収したステロイドが血流に乗って全身に作用するため効果はかなり高くなるのですが、その分副作用も大きくなります。
【喘息で使われるステロイド薬の種類】
- プレドニン
- セレスタミン
- コートリル
- メドロール
- レダコート
等
【心配なステロイド薬の副作用】
ステロイド薬と言えば副作用が心配になるお薬かと思いますが、ステロイドは強い抗炎症作用がある一方、体の免疫反応を抑えつけてしまうためその分外部からの攻撃に無防備になってしまいます。
- むくみ
- 高血圧
- 細菌・カビによる感染症
- 胃潰瘍
- 十二指腸潰瘍
- 肝機能障害
- 腎臓障害
- 白内障
- 緑内障
- 筋力低下
- 月経異常
- 肌荒れ(吹き出物)
- 骨粗鬆症
等といった副作用が起こる可能性が高くなります。
ですので、ステロイド服用中は、禁煙はもちろん、風邪を引かないようマスクを心がけたりする必要はありますし、長期的に服用するのもやめた方がよいでしょう。
ただし、ステロイド自体体が本来持っているホルモンでもありますので、必要以上に怖がり逆に発作を我慢してどんどん喘息を悪化させて行くよりも、上手にステロイドと付き合って症状を抑えた方がよいかと思います。
筆者は1度アナフィラキシーを起こし、全身が真っ赤に腫れ上がるようなことがあったのですが、その時、しばらくの間ステロイドを服用し続けていましたが、副作用が起こることなく、逆にステロイドがなければ命の危険もあったかもしれないということもあったので、やはり必要な薬だと思います。
断薬のさいに、症状が治りきったあとでも、徐々に間隔を空けて薬を減らしていくという手間などはありましたが、過度に心配をする必要はないかと思います。
長引く咳には漢方も有効的
発作的なものにはやはり西洋医学の薬でガッツリ抑えた方がよいのですが、咳によって体力が無くなってしまったり、長引く咳には漢方なんかも有効的。
基本は吸引ステロイド薬を使用することには変わりませんが、体の免疫力や体力を補うものとして、漢方を利用する病院も増えています。
【アレルギー性気管支喘息に向いているとされる漢方】
- 麦門冬湯……空咳タイプで、痰が切れにくく、強く咳き込んでしまう場合。
- 柴朴湯……喉に異物感がある(喉が詰まったような感覚)がある方の咳症状に。
- 小青竜湯……薄い水のような痰を伴う咳がでる場合。
- 麻杏甘石湯……喉が渇いて、咳が出るタイプに。
- 五虎湯……体力はあるものの、咳が強く出てしまう場合。
- 神秘湯……痰が少ないものの、息苦しさ、喘鳴、咳が出る場合。
- 苓甘姜味辛夏仁湯……やや虚弱体質で、胃腸が弱り、水っぽい痰が出る場合。
- 補中益気湯……咳のしすぎで体力が奪われてしまったさいの、体力回復に。
【漢方は人それぞれに合ったものを】
漢方は咳や喘息向けといっても、その人の体力や体質などに合わせ種類を変えていくものですので、自己判断で服用せず(特に他のお薬を飲んでいるときは)、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
今では漢方医・漢方外来など漢方の勉強をしている医師もいますので、そうした先生に相談するのもよいでしょう。
サプリメントを視野に入れても
咳が酷い間はしっかりと薬で抑えていく必要がありますが、アレルギー性気管支喘息の場合「アレルギー反応」ということもあり、サプリメントなどで体質改善をしていくことによって、症状がよくなっていくこともあります。
アレルギーによいとされている、乳酸菌サプリやじゃばらサプリを補助として服用してくのもありでしょう。
今回紹介した薬の注意
この記事の情報は2018年の段階での情報を元に書いています。
医療は日進月歩。
翌年にはもっとよい薬が出ていたり、薬の効果が異なるものになっていたり、今まで大人のみだったものが子どもでも服用できるようになったりする場合があります。
あくまで参考としてお読みください。
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