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古くからの生活を続けるアーミッシュにはアレルギー疾患が少ない?
みなさん「アーミッシュ」という集団をご存じでしょうか?
アメリカやカナダなどに住む、ドイツ系移民なのですが、その生活様式がかなり独特で、何度かテレビなどでも取り上げられています。
そんなアーミッシュなのですが、人口に対して喘息や花粉症などといったアレルギー疾患がかなり少ないという調査結果があり、その生活様式が注目されています。
なぜ、アーミッシュの人々にはアレルギー疾患が少ないのか。
アーミッシュの人々はどのような生活を送っているのか。
その生活様式を追いつつ、謎を解明していきたいと思います。
アーミッシュの生活とは?
※アーミッシュの人々は写真を嫌がるためイメージでお送ります※
アーミッシュは、一言でいうと「私たちが想像する開拓時代の頃の生活スタイルを貫く人たち」。
彼らは宗教的な概念でそのような生活様式を行っているのですが、電子レンジやテレビ、パソコンなどはなく、手作りの養父を着て、畑で取れた野菜を食べて……と、基本的に自給自足の生活です。
その中で、アーミッシュは車の代わりに馬を使い、ニワトリを飼って卵をとり、もちろん生活の共として犬や猫と共存しています。
さらにミルクを絞るためにヤギの世話をしたりといったことを、子どもの頃から当たり前のようにする生活をしているのです。
この、動物と接した生活を当たり前のように行っている事こそが、実はアーミッシュがアレルギー疾患や喘息になりにくい秘密だったのです。
アーミッシュと都会の人とのアレルギー疾患の比較
アーミッシュの人々と都会で暮らす人々とは、どの程度のアレルギー疾患の差があるのか。
どうやら、アーミッシュと都会の人を比べると、花粉症発生率は20分の1、アトピー性皮膚炎は10分の1とかなり少ない事が解りました。
もちろん、まったくアーミッシュの人が喘息にならないというわけではないのですが、その発生率がかなり低いことがわかりますよね。
アレルギー大国のアメリカにおいて、アーミッシュのこのアレルギー発生率の低さはまさに神がかった確率だそうです。
もちろん、不思議に思った医者が遺伝検査などを行ったのですが、アーミッシュの人々とドイツ系民族の遺伝的な違いは見つからず、どうやらこれは後天的なもの、つまり「生活環境」にあるということが解ったのです。
アレルギー発生率の低さは細菌が関与!?
アーミッシュの人々を見ていると電化製品を使わないことや、人工的な食べ物を食べないことのほか、最も都会に住む人と異なる点、この家畜などと密接に関わった生活をしていることが大きな違いなのです。
アーミッシュの人々の血液を検査したところ、制御性T細胞「Tレグ」が通常の都会生活の人々よりも35%も多い事が解りました。
この「Tレグ」は、免疫細胞が花粉やダニなどの、普通なら体に問題の無い異物を攻撃しようとしたときに、「それは問題のないものだよ!!」と攻撃を阻止してくれる細胞で、「アレルギー反応を抑えてくれる」役割を果たしてくれます。
人間の体は、家畜や動物と密接に触れ合う機会の多い生活下において、将来細菌感染する可能性が高いと判断し、免疫細胞を多く作ろうとします。
その際、「Tレグ」も増やすことによって、問題のないものまで攻撃をしないように、調節しているのであろうと考えられています。
アレルギー対応の常識を覆す事に……
このように、幼少期から動物(家畜)とふれ合い、自然と触れ合ってきたアーミッシュの人々は血液中の「Tレグ」が多くなるということですが、ことのことからわかることは、子供の時から必要以上にアレルゲンを排除する必要はないということです。
特に、妊娠中や授乳中に、母胎がアレルギーの元となりそうな食べ物を食べることで子どもがアレルギーなるという理論が、覆され、子どもは早い段階から母親の血液を介して様々な食品成分に触れた方がアレルギーの予防によいということになります。
確かに、舌下免疫療法などは、花粉の成分入りの薬を取り込むことによって「Tレグ」を増やして花粉症の根本治療をするものなので、幼少期のうちから綺麗に、なんのアレルゲンにも触れさせない生活をしてきたほうが、将来的にアレルギー疾患を引き起こす可能性が高くなりそうな気がしますよね。
もちろんまだ未知数な部分もある
とはいえ、まだ未知数な部分もあります。
例えば、アーミッシュと同じく動物と触れ合う機会の多い農家の子どもも「Tレグ」が少ないのかと言われたら、確かに都市部の子どもの11%が喘息であるのに対し、農家の子どもは6.8%と少ないのです。
少ないのですが……アーミッシュの子どもは更に少ない5%と、より喘息である確率が低かったのです。
これはアメリカの調査で出た統計なのですが、ではなぜアーミッシュの子どもの方が喘息の率が少ないか……といわれても、まだハッキリとした理由がわかっていません。
既にアレルギーを起こしてしまった子どもに、アレルゲンであるものを与えるのは命に関わる危険な行為ですので、突然、明日から「自然に則した生活をしよう!」ということはできません。
ですが、これからのアレルギーの解決策についての一端が、これで解るような気がします。
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