アトピーの歴史を知ることは自分の治療にも役立つこともある
アトピーは最近出てきた病気のようでありますが、実はかなり昔から見られてきた疾患です。
アトピー専門外来といった、アトピーだけに特化した診療科や、アトピーの薬などは確かに新しい物ですが、歴史上はとても古くからあり、「現代の環境悪化が原因だ!」とも一概に言えるものでもありません。
そもそも、アトピーとは遺伝的な部分もあり、「アトピー性皮膚炎になる人はあるけれども、同じ環境でアトピー性皮膚炎にならない人もいる」というものです。
かといって、自分のアトピー性皮膚炎は100%遺伝が問題なのかと言えば、環境が整っていれば(自分に適したものであれば)発症しないことも多く、親や先祖の問題でも無いこともわかります。
ですが、こうした遺伝的な部分が原因の一端となる疾患に関しては、実は大昔から見られている症状でもあるのです。
史実では紀元前のローマ時代から
最古のアトピーの記録はなんと紀元前63年。
ローマ工程アウグストゥスが湿疹・喘息・鼻炎で悩んでいたという記録によって、アトピー性の疾患にかかっていたのではと言われています。
日本では1800年頃の江戸時代の文献に雁瘡病という皮膚病の記録があり、雁が去る頃(春)に病状が悪化し、雁が帰ってくる頃に病状が安定するとのことから、アトピー性皮膚炎の事を指していたのではないかとされています。
その後、1923年にコカとクックの2人の医師により「特定されない(アポトス)」という言葉から、アトピーという言葉がつけられ、1932年にロスト医師により、アトピー性皮膚炎と思われる患者を、クリーンな部屋に入れることによって湿疹が出なくなるということが発見されました。
1933年ザルツバーガーにより、アトピー性皮膚炎という病気の命名がなされ、1947年コーク医師が内因性接触アレルギーというものが発表されました。
そして、1949年にタフト医師によりアトピー患者はゴミなどの環境に過敏であることが証明され、翌年、日本でもアトピー性皮膚炎という病名が正式に紹介されるようになりました。
このようにして、かなり長い年月を経て「アトピー性皮膚炎」というものが一般的に広まるようになったのですが、それまでの間は「なんだか痒くなってしまう皮膚病」という認識しかなかったため、数多くの人々がアトピー性皮膚炎で苦しんできたかと思います。
昔の方が環境がよかった……という意見もありますが、昔は衛生的にも今よりももっと劣悪な環境で、ひとたびアトピー性皮膚炎を発症してしまった場合、薬もなくとても苦労したかと思います。
そんなアトピー性皮膚炎の患者を救う薬が出てきたのは、もう少し先のことです。
アトピー性皮膚炎の治療の歴史
病状としてアトピー性皮膚炎が広まった後、遅れること2年経った1952年、ザルツバーガーによりステロイド軟膏が開発されたものの、1964年、スギの大量植林により花粉症が広まり、アトピー性皮膚炎はスギ花粉症による物という説が有力になってしまいます。
もちろん、アトピー性皮膚炎の要因としてスギ花粉はあるものの、全てのアトピー性皮膚炎の原因がスギとは限りません。
ですので、1965年シャノンにより金属アレルギーによるアトピーという物が発見され、1969年、昆虫学者ピークスマスと宮本医師がダニ起因説を述べることにより、少しずつアトピー性皮膚炎の治療が開拓され始め、1978年亜サートン医師らが牛乳や卵と小児アトピーとの関連性を報告し、多方面からの研究が進むようになります。
そうして、1979年第一回国際アトピー性皮膚炎シンポジウムが開催されます。
このようにしてアトピー性皮膚炎の治療法やガイドラインが確立されていき、2000年厚生労働省がアトピー性皮膚炎標準治療ガイドラインを作成、2001年日本皮膚科学会がアトピー性皮膚炎標準治療ガイドラインを作成し、アトピー専門外来などが誕生するようになったのです。
2001年に日本皮膚科学会からのアトピー性皮膚炎標準治療ガイドラインがでた……とは、ごく最近の事のようで驚きですが、医療の進化は日進月歩。
続々と新しく、より効果的な治療法が生まれています。
最新のアトピー性皮膚炎治療
アトピー性皮膚炎の治療法は、基本的に「ステロイド外用薬」と「保湿」となってきています。
ですが、今では「栄養療法」「PANセラピー」「骨格療法」「ブリーチバス療法」「プロアクティブ療法」など、マイルドな物から、しっかりと効くものまで様々な治療法が生まれています。
また、薬も新しい物が増えてきて、今までよりも安心してステロイド外用薬を使う事もできるようになってきました。
今アトピー性皮膚炎で悩まされている方も、不安に感じている方も、これからの医療を信じ、希望を捨てずに治療をしていくことが大切でしょう。
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